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2010年5月19日水曜日

最後の質問。

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検査は、結局のところ、老先生のところでしてきた検査と同じだった。若い先生は検査結果について一通り説明して、老先生の検査結果と同じであることを述べると、どこかへ行ってしまった。

診察室は、よく見ると、奥が通路になっていて、その意味ではふつうの病院と同じつくりになっていた。だが診察室そのものが真四角で広いので、そのことに気づきにくいのだ。ひらひらしたカーテンもついている。どこにでもあるような事務用の引き戸つきの戸棚も、これほど中ががらんとしているのは見慣れない。やっぱりドラマのセットみたいだ、とイタチは思った。

通路にはほんのたまに看護婦さんが通る。それもますます、ドラマの通行人みたいだ。先生がその通路のどちら側だかに消えてから、もうずいぶん時間も経つ。今度通路から誰が登場しても、別におどろかないぞ、とイタチは思った。イタチだって、キリンだって。

しかし出てきたのは、さっきの先生と第三の先生だった。

「へんにきこえるというのはどういうふうにきこえるんですか?」
第三の先生も、さっきの若い先生と同じことを質問しはじめた。しかし同じに答えるのはなかなか難しい。伝言ゲームのようになってきたぞ、とイタチは思った。

「わからないですね」
第三の先生がそう言ったので、イタチはそれで放り出されてしまった。

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2010年5月18日火曜日

耳の検査

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大きい病院の耳の検査室は、学生が人並みに住めるほど広かった。広い中にふたりも検査員がいるのだけれども、これはつまり一人は新人で研修中だったのだ。やれやれ、とイタチは思った。

予想通り、新人は乱暴だった。

ベテランの検査員が居るときはまだよいのだが、一人になって、片耳ずつ聴力を測るために耳栓をしようというとき、酒樽の栓をねじ込むように、直立したまま、耳穴もみないで、ぎゅうぎゅうスクリューさせてくる。あわててベテランの検査員がやってきて、

「お風呂の栓じゃないんだから、そんなにしたら痛いよ」とたしなめた。

それでも新人は、もう片方の耳も、そんなふうにして栓をした。イタチは、さっきまで栓をしていたさっきの耳が、ちょっとぼーっとしてくるのを感じた。

「あれー、耳栓がないですねえ。どこいっちゃったんだろう」

新人は今度は耳栓がないといって探し始めた。

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2010年5月17日月曜日

耳の診察

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がらんとして広い診察室は、ドラマのセットの中に、パソコンが一台のっている事務机をひとつだけ持ち込んだものの、いつのまにかそれが定着してしまって、そのパソコンだけがカタカタと働いているような空間だった。

大きな病院の先生は、多少予想はしていたのだけれども、とっても若い先生だった。
「症状はいつごろからですか?」
イタチは考え考え答えたのだけれども、質問の内容は近所の耳鼻科の老先生と同じだし、それについては老先生がたっぴつな文字で、欄を埋め尽くすほどびっしりと書き込んであるはずだ。

たとえば老先生はこんなことも、ついでに、という感じに一筆に書き込んでいた──
「ネコの鳴き声がへんにきこえる」

「というわけで、そこに書いてあるとおりなんですけど」
イタチは、なんだか自分が言っていることが、若い先生が今読んでいる紹介状に書いてることと、だんだん違うような気がしてきて、そう言った。

「では検査しましょう」
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2010年5月15日土曜日

イタチと大きい病院

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そういうわけで、イタチは「大きい病院」へ行くことになった。
紹介状に書かれた病院へ行くと、確かにそれは大きい病院だった。入り口にはわざわざ今日の予約は3057人と書いてある。付き添いがいないのは私ぐらいで、地域の病院のように老人ばかりでもない。世の中には難しい病気に悩まされている人がたくさんいるのだなあ、とイタチは思った。さぞ待たされることだろうと思いながらベンチに座っていたが、実にあっさりと自分の番になり、イタチは慌てて近くの診察室のドアを開け、中へ入った。
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2010年5月14日金曜日

耳鼻科の老先生。

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「左の耳がおかしいんです」と、イタチは言った。
「うん」と先生が言う。
「このね、グラフが下がっているでしょ、この下がり方が標準以下なんだね。聞こえが悪いんです」
「なるほど」
「でもどうしてか、僕にはわからないなあ」
「……」
「大きい病院へ行きましょう」
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2010年5月13日木曜日

イタチの耳の変化について。

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ある日イタチは、ふいに、中耳炎になった。耳鼻科の先生に診てもらうと、検査しましょうという。壁にぽつぽつと小さな穴の空いた、カフェのトイレよりも狭いオーディオルームに入って、検査員の方が
「聞こえたら、ボタンを押して下さい」と言う。
「ずっと押し続けなくてもいいんですよ。聞こえたところで1回押して下さい」
と言う。
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