2010年5月18日火曜日
耳の検査
大きい病院の耳の検査室は、学生が人並みに住めるほど広かった。広い中にふたりも検査員がいるのだけれども、これはつまり一人は新人で研修中だったのだ。やれやれ、とイタチは思った。
予想通り、新人は乱暴だった。
ベテランの検査員が居るときはまだよいのだが、一人になって、片耳ずつ聴力を測るために耳栓をしようというとき、酒樽の栓をねじ込むように、直立したまま、耳穴もみないで、ぎゅうぎゅうスクリューさせてくる。あわててベテランの検査員がやってきて、
「お風呂の栓じゃないんだから、そんなにしたら痛いよ」とたしなめた。
それでも新人は、もう片方の耳も、そんなふうにして栓をした。イタチは、さっきまで栓をしていたさっきの耳が、ちょっとぼーっとしてくるのを感じた。
「あれー、耳栓がないですねえ。どこいっちゃったんだろう」
新人は今度は耳栓がないといって探し始めた。
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