2010年5月19日水曜日

最後の質問。

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検査は、結局のところ、老先生のところでしてきた検査と同じだった。若い先生は検査結果について一通り説明して、老先生の検査結果と同じであることを述べると、どこかへ行ってしまった。

診察室は、よく見ると、奥が通路になっていて、その意味ではふつうの病院と同じつくりになっていた。だが診察室そのものが真四角で広いので、そのことに気づきにくいのだ。ひらひらしたカーテンもついている。どこにでもあるような事務用の引き戸つきの戸棚も、これほど中ががらんとしているのは見慣れない。やっぱりドラマのセットみたいだ、とイタチは思った。

通路にはほんのたまに看護婦さんが通る。それもますます、ドラマの通行人みたいだ。先生がその通路のどちら側だかに消えてから、もうずいぶん時間も経つ。今度通路から誰が登場しても、別におどろかないぞ、とイタチは思った。イタチだって、キリンだって。

しかし出てきたのは、さっきの先生と第三の先生だった。

「へんにきこえるというのはどういうふうにきこえるんですか?」
第三の先生も、さっきの若い先生と同じことを質問しはじめた。しかし同じに答えるのはなかなか難しい。伝言ゲームのようになってきたぞ、とイタチは思った。

「わからないですね」
第三の先生がそう言ったので、イタチはそれで放り出されてしまった。

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