2008年11月4日火曜日
採寸
そんなつもりはなかったんだけれども、イタチはやっぱり、その水かきが気になった。
人には一般に水かきはついていないし、それに確かによく見れば、それは水かきに見せかけているだけで、その明るい緑いろの手袋の中には、水かきのない手が入っているかもしれないのだ。
社員の大森くんが来て「どこでやりますか」というから、イタチがそれでなくても途惑っていると、アルバイトの悦子さんが「トイレかなあ」というので、「いいですよ」とイタチは軽く請け合った。
トイレは階段の下の天井が三角に切り取られたデッドスペースに、まるでそのようにたっぷりと場所を取ることが、ほかのみんなにとっていちばん都合がいいのだというように広く仕切られた中にあった。
「ああ、じゃあこちらへどうぞ」
大森くんが案内するから、イタチとその水かきのついたエンジニアと、なぜか悦子さんまで一緒に、ぞろぞろとトイレへと歩いていった。
そのようにして採寸が始まった。
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