2008年11月14日金曜日

水車小屋の交替

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私は初めてだったので、仕事の説明を受けてから、仕事をするようにと言われていた。
「この水車は、時計を巻くのに使っているんです」と前任者は言った。「ま、説明は5分もかからないですよ。どうぞ」と言って、椅子を勧めた。

「水車に沿って、観覧車みたいに、バスケットがついています。このうち赤いのが机のところへ来たら、分銅をひとつ入れてください。これで時計は10巻したことになります」
「なるほど」
「分銅が7つになったら時計を外して、次に赤いのが机のところへ来るまでに、時計をセットしてください」
「わかりました」
「かんたんでしょ」
「そうですね」
「では私は帰ります」
「お疲れ様」
「さようなら」

前任者がドアを開けると冷気とともに風の音がわっと流れ込んできて、落ち着かないうちに、彼は去ってしまった。あとには静寂。「かんたんでしょ」「そうですね」「分銅をひとつ」「机のところへ来るまでにね」……。

さてと、次の交替が来るまでに、あと8時間ある。
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