2008年11月13日木曜日

イタチのスケート靴

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イタチは、スケートに行くことになっていた。アルバイトの悦子さんの誘いで、生まれて初めて、スケートへ行くことになったのだ。

「スケート靴は借りればいいのよ」と悦子さんは言った。
「でも足がちょっと形が違うので」とイタチは言った。
「大丈夫」と悦子さんは言うのだった。「私が借りてあげるから」

さようならば、とイタチは行くことにした。

ところがさあ行こうという日の2日前に、いつものようにグリーンのエプロンをしたイタチは、右手にダスターを持ち、フロアに立っていて、突然──くしょん!とくしゃみをした。それから夕方へかけてくしゃみがひどくなり、翌日はついに途中から早退することになった。熱が高くなりはじめていたのだ。

「これはスケートは無理みたい」と悦子さんは言った。「だってすごい熱だもの」
イタチは苦しそうに、困った顔をした。
「しょうがないわね、また今度にしましょう」

そのようにしてスケートへ行く話は流れてしまったのだった。
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