2008年11月5日水曜日

メバルの大逆襲

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グリーンのエプロンをしたイタチが多摩川へりを歩いていると、空にふわりと雲が浮かんで、みるみるラッコの形になった。少しずつ、少しずつ流れながら、ラッコの雲はくるみの殻を割り、忙しそうに食べてはスクリューのようにくるりと一回転して、さらにもう二回転して、もの珍しそうにイタチを見て、またくるみに戻るのだった。

「ふん!」という声がするので振り向くと、そこには燃えるようなオレンジ色のきつねが前足を上げて立っていた。まるでファイアーフォックスだ。
「フォックスじゃないよ、僕はイタチだよ」そう言ってまた鼻を鳴らすのだ。「白いイタチなんて面白くないよ。きれいでもないし」

そこでイタチは、あれはラッコだと思うけどなあ、と思ったものだ。「だってくるみを割っていたし」

「ふん」と赤イタチが言ったところで、そうかははん、とイタチは気がついた。メバルのしわざだ、と。

そこでイタチは目が覚めた。
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