2008年9月28日日曜日

真空の浜辺

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ロングビーチ

観光地へ行くと、私の癖で、もしここで生まれ育っていたら、と考えてしまう。気候のよい避暑地だから、中学生の私は、スポーツ系の部活に入っていたかもしれない。東京へ行くには2時間で、いやしかし、私が高校生の頃まではまだ新幹線がないのだから一時間に何本という列車を待たねばならなかったろう。ということは滅多に地元を離れることはなく、ペイリン氏のような生き方に共鳴したかもしれない。

いつもはおよそそんなふうに考えるのに、初めてその浜辺に着いたとき、珍しく私はそう思わなかった。そこに生まれ育ったかもしれない私と、私との間にはなんの接点も共通点もない。そのことだけが白日の下に曝されていた。そして風が次々とやってきては、記憶の麦わら帽子を飛ばしていった。

ロング・ビーチだ。

生まれて初めて降り立つロング・ビーチは、よく晴れていた。水平線の真上に飛行機が斜めに走っているのが見えた。風の音だけがしていた。半年とか、2、3年とか、ある期間ここに滞在して、ゆっくり考えられるといいなあと私は思った。

ロング・ビーチにはスターバックスがある。駅前の、星条旗が立っている駐車場のすぐ隣だ。いつかきっと、そこでロング・ビーチについて書く時が来るだろう。いやに確信的に私はそう思う。そうなるといいなあと私は思った。
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