蠅は今日は、壁の中へ隠れている。なぜなら今日は研修だからだ。マネージャーがやってくるそうだ。そしてその訓話はのちのち本になるのだ、とうわさされている。別にたいした訓話でもないのだが、と蠅は思う。だけど、そう思うとうっかり話を聞いてしまわないとも限らない。
それよりうっかり姿を見せて、蠅がマニュアルに載るようなことこそ危機的である。研修の日は壁に隠れること。蠅についての質問があっても、実際にいないのだから対応できない、というふうにこれからもやっていくのだ。そんなふうにしているうちに、蠅は眠ってしまう。壁の中で。
そして、驚いたことに、物語は転がり始めようとしている。
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