2008年10月28日火曜日

雨の降りそうな夕方に。

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sky

「え? 何? じゃあ全然降っていないの、そちらでは?」
そういう声がして、カフェは一瞬ひやりとした静けさに包まれた。その人は声を落として、話を続けた。
「そうなんだ、あのね、たいへんな雨なのよ、こちらは」
それぞれのテーブルでは、ふたたびざわざわと、会話が動き出す。
「傘がなきゃ、とてもじゃないけど、駄目よ」
しばらく話してから、その人は言った。
「降っていないんなら、私がそっちへ行こうかしら」

彼女が席を立っても、しばらくは雨が降っていた。嫌味のように、これでもかっ、と降る雨だ。そしてきっかり30分後に、ぴたりとやんだ。

イタチは、空を見た。
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