2008年10月30日木曜日

作家のあいさつ。

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ある日、カフェに作家がやってきた。へえ〜、カフェに作家なんか来るんだ、と思うかもしれないけど、意外とたくさん来るものだ。カフェに作家がいても、別に原稿を書いているわけではないから、特にこれが作家だというめじるしはない。それに特にふるまいに共通点もない。

簡単だ、彼らは自分が作家だと言うのだ。言いはしなくても、それとわかるように言うのだ。

だが、その日はそういういつものパターンとも違っていた。イタチは初対面で、いきなり見抜かれたのである。イタチであることを、イタチのまま、ここで働くことになった経緯を、つまりイタチのざっくりといえばすべてを。

「こんにちは」とイタチは言った。
どんなときでもスタートはあいさつだ。
「ああ、どうも」と作家は言った。
「こちらこそ」とイタチは言った。
「いえ、……」そう言って作家は咳払いした。
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