彼は、はじめてイタチに会った時のことを思い出していた。そんなにも簡単に思い出せたことは、彼にとっては少々意外だった。私はこの動物をも傭い入れるのだろうか、と彼はその時、思ったのだ。
やれやれ、と彼は首を振った。
イタチは手の先にあるツメをなでていた。
「少々聞きたいことがあってね」と彼は切り出した。「珍しい豆についてなんだ」
そう言うとポケットからコーヒー豆の入った密閉のカプセルを取りだした。静かに座っているイタチの前で、ゆっくりとそれを開封した。敵意と懐かしさにあふれた臭いだった。
「知っているね?」
イタチは黙ってうなづいた。
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