2008年10月24日金曜日

イタチに聞く。

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面接の前の日、イタチは眠れなかった。遠い昔のことだ。
「そりゃ、そうです。面接なんて、初めてですから」

そして、長い年月が流れ、最終的にはコピールアク担当のバリスタになった。イタチとしては上り詰めたポジションと言ってもいい。

「ガイドブックに貢献したというのは、すごいことだと思います。でもそれは、本当に私が達成したことなのかというと、そうでもないと思います」
イタチは今日はなぜか雄弁なのだった。
「ほんとうに違うのですよ、きっと。むしろ毎日が、毎日やってくる、ということのほうがずっと大事なんです。ずっと、ずっと大事。仕事って、いったん始めたら、そのうちにどこまで行くんだろう、って思いませんか? これはひょっとするとどこへも行かないんじゃないかって。ただただ、ずっと平坦なんじゃないかって」
イタチは手のツメをきゅっと出して、またするっとひっこめた。
「でもイタチから誰かに、それはどこへも行きませんよ、と言うわけにはいかないでしょう? それはなんでイタチがって言われますよ、やっぱり」
イタチは、いやにきびきびと、言った。
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